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東京高等裁判所 昭和25年(う)1230号 判決 1950年6月10日

被告人

竝木保雄

主文

原判決を破棄する。

被告人竝木保雄を懲役三年に処する。

但し、本裁判確定の日から五年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

前略、論旨第二点について。

本件起訴状には、被告人及び原審相被告人中台孝義が共謀の上角野正人を「脅迫して畏怖せしめ、同人より同人所有の現金千三百八十円を強取した」旨の記載がある。これは、強盗の記載であつて、恐喝の記載でないことは、文理上明らかであつて、該脅迫によつて相手方の反抗を抑圧した趣旨であることは、疑問の余地がない、従つて、この記載部分に関する検察官の所論訂正の申立は、単なる語句の補正であつて、訴因の変更を内容とするものでないことは言うまでもない、又、原審第二回公判調書によれば、検察官の証人角野正人に対する主尋問の冐頭に、「強盗」なる用語のあることは、所論の通りであるが、検察官は証人に対し、当時の被害顛末に関し、任意に自由に供述させて居り、頭初の発問中の、「強盗」なる一語によつて、証人の具体的事実の供述を強盗に該当する供述に導いているものでないことは、右公判調書に顕れた検察官と右証人との問答によつて明らかであるから、検察官の右尋問が、被告人の防禦権を侵害し証言の信憑性を左右したものとは解されない。原審の訴訟手続には所論のような法令の違背は有しない。論旨は、いづれも理由がない。

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